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ノイズへの欲求を感じる

以下、7/9ライブの宣伝文のための文章です。実際に採用(会場のジャズ喫茶「映画館」で小冊子を作っているんですが、それに掲載されました)されたのはもっと短い文章ですが、折角書いたので全文掲載します。

「ノイズへの欲求を感じる」

東京はノイズに溢れている。一見するとどんなに静かな部屋でも、耳のリミッター(人間の耳はよく出来ていて、必要な音しか聞こえないようにリミッターがかかる)を外せば、微細なノイズが聞こえてくる。

人間は否が応にも、風土と密接に関わっている(都市で生活すると無意識にならざるを得ないが)。そんな騒音にまみれた都市で生活すれば、ノイズはいつの間にか体に刻み込まれ、ノイズはノイズで無くなる。

ノイズ音楽の始祖とも言われることのある、ルイジ・ルッソロは、近代文明の機械のノイズを取り入れた「騒音音楽」を提唱することによって、そのことを予見(もしくは既に実感していたのかもしれない)していたと言えるだろう。

そもそも、ジョン・ケージが言ってたように、完全なるサイレンス等なく、全く音のなっていない部屋でも(ジョン・ケージの場合は無響室で座禅をしたそうな。ちなみに無響室は東京のICCにある)、神経系統から発する音や血流の流れなどの音がするというし、赤ん坊が胎内で聞く最初の音を流すヌイグルミがベビー用品として売られていたが、それはノイズとしか言いようが無い音だった。

そして「ノイズがノイズでなく」、音楽として楽しめることを裏付けるように、「ノイズ合唱団」のメンバーはほとんどがノイズのノの字も知らなかった人たちだ。彼らの多くは「ボイスパフォーマンス(声による抽象表現)」的な興味から参加している人がほとんどなので、一般の人よりも「抽象的な音楽」とも言えるノイズに多少入りやすいとも言えるし、参加の動機はそれ以外にも色々だろうが、長く参加しているメンバーを見ると、「ノイズ」を音楽として楽しんでいるのを見てとれる。

また、幸いにも、ノイズ合唱団はライブを行う機会に恵まれ、昨年5月の初ライブから、既に14回のライブを行っているが、いずれのライブも、お客のほとんどは、やはりノイズ音楽の「ノ」の字も知らない人たちが多かったが、好評を得ている。

まあ、生活音としてのノイズが影響している以外にも、市場を流通している音楽に、ノイズ的な要素が多く含まれるようになったため(特に電子音で構成された音楽にはそれが顕著だ)、お客の耳もノイズに既にあるレベルまでは馴れていた可能性も否定は出来ないだろう。

ここら辺で、ノイズ合唱団について、もう少し書こう。ノイズ合唱団のコンセプトは、機械(主にPC)で行われることの多いノイズ音楽を、集団の声で表現する、である。(ちなみにここでいうノイズ音楽とは、70年代、パンクと同時期に起こった「インダストリアル・ミュージック」の流れを組むノイズ音楽だ。パンクに比べ、一般には全く知られていないが、ノイズ音楽を愛好するシーンは確実に存在し、タワーレコードに行けばノイズのCDが結構沢山あることからもそれは分かる。そしてこれまた全然一般には知られていないが、「ノイズ音楽」という言葉が使われ始めたのは日本においてで、それだけ日本のノイズ音楽シーンは活発で、「ジャパノイズ」と呼ばれる言葉が存在するほどだ。勿論、これ以外にもノイズ音楽は存在し、それは現代音楽、フリージャズ、パンクからの流れも存在する。ただこれらの流れはそれぞれ独立しているというよりかは、混然一体となっている。)

ノイズ合唱団の主宰である、私は、ノイズ音楽というジャンルの存在は知りつつも、それを聞き始めたのはここ3、4年のことだ。何故、声でノイズ音楽をやるようになったかというと、一つはボイス・パフォーマンスの流れがある。ヘビーメタルやハードコアパンクやプログレが好きだった私は、楽器が出来ないため、自分の声の拡張を志向した。その最初期の大きな影響は、ホーメイと呼ばれる、アルタイ山脈(モンゴルの西北部)周辺に多く存在する「倍音唱法(声の倍音成分を強調・コントロールし、笛のような高音や非常に低い音を聞かせる)」で、そのお陰で、日本においてのホーメイ研究・実践の第一人者の1人であり、世界的なボイスパフォーマー/即興演奏家である巻上公一氏と出会うことになる。

始めはホーメイに対する興味から、氏が主宰する声のワークショップに参加していたが、次第に即興やボイスパフォーマンスに対する興味が高まっていった。ある日、私が、社会的にはあまり好ましい音では無いとされる、「鼻をかむ音」「痰を吐く音」「吐く音」等を中心としたパフォーマンスを行ったところ、「そこら辺のノイズバンド真っ青だね」と氏は評した。これが「声でノイズ音楽を表現する」ことの最初の始まりとなった。

そしてもう一つの流れはヒューマン・ビート・ボックス(以下、HBB)である。ヒップホップから生まれたこの表現は、リズム・マシーンの音やレコードをスクラッチ音、サンプリングといったDJが出す音を、口とマイクで真似する。一時期、富士Xeroxの宣伝で、日本人でHBBを行うAFRAが出ていたので、ご存知の方もいるかもしれない。

マイクを使うと、人間から発する音の音色は、生の音より少し異なったものになる。そして、息の音や、歯擦音等の無声音を強調して音を出すと、人間味は更に失われ、より機械の音に近くなっていく。

ノイズ合唱団では、「ノイズ音楽を声で表現する」こと以外にも、「声の拡張」や「凄い声を目指す」事も、活動方針としている。とある音声学者が、人間は、人間の口腔から出し得る音の数パーセントしか使ってない、と言ってた。人間にはまだまだ色んな音が出せる可能性があり、前述のホーメイのように、好き嫌いに関わらず、誰にでも凄い声だと認識されるように、今後も頑張っていきたい。

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