« 神秘の声 | Main | 琴や三味線は日本の大衆を代表する楽器じゃない »

明日の演目解説

明日の演目解説

「神秘な声の旅」プログラムノート

第一部

1、仏讃
 この曲は、天台声明のひとつ。「声明」は主に、
密教儀礼の「「みえない世界と交流をはかっている
さま」を「声」によって「明」らかにしている宗教
的表現である。
 仏讚は、この天台声明の「胎蔵界曼陀羅供養」で
大日如来に出会えたことに感謝して、唱えられる声
明。梵語(古代サンスクリット語を残す形の言語)
で書かれているため、古代サンスクリット語に再び
翻訳することができた。今回は、その一部を紹介
し、そこに振り付けをする。

[仏讚の内容]
 大自費を持ち、保護する者にして、また一切を知
れる導師として、福徳は海のごとく、功徳を持つ如
来に、私は敬礼致します。


2.Neydawud
 この曲は、イラン/ペルシャの古典声楽の曲であ
る。

 イラン/ペルシャの古典声楽の特徴は以下の通り。
1.国民の誰もが、何かしらの古典詩を暗誦出来る
といわれるほど、「詩」の国である「イラン」の伝
統音楽も、やはり10〜13Cの古典詩が基本となってい
る。そのため、リズムが感じられない「無拍」が重
要視される。
2.タハリール(うぐいすの声)唱法と呼ばれる、
独特のコブシが使われる。その唱法が声楽の要のテ
クニックとなっているため、基本の発声自体が、こ
の唱法をやりやすいように出来ている。

 ここで取り上げた曲は、12旋法あるうちの1つで
ある、ホマユーン旋法に基づく小曲である。なお、
今回のように、小曲1曲だけを取り上げることは伝
統的にはあまり無い。通常は、その旋法に基づく数
多くの小曲(グーシェ)を、伝統的な決まりで並
べ、即興を交えながら演奏する。


3.迦陵頻急(かりょうびんのきゅう)
 「迦陵頻(かりょうびん)」という架空の鳥がい
る。天空に住む鳥である。それが地上にやってきて
人々に吉祥をあたえる。インドネシアでは「ガルー
ダ」と呼び、アジア圏にこの鳥の伝説は伝わる。

 雅楽曲の「迦陵頻」の「序・破・急」が残されて
おり、子どもによる舞も残されている。その雅楽の
龍笛の唱歌(しょうが⋯ソルミゼーション)をもと
に、作曲した。

 まず、迦陵鬢が天で鳴く声が聴こえてきた。そし
て、迦陵頻が地上に舞い降りてきた。迦陵頻は、地
上に人々の音楽と共に舞い遊ぶ、そして、再び天に
戻っていく、という曲。


4.オッペイホーメイ
 モンゴルにはホーミーと呼ばれる、特殊な歌唱法
が存在する。この唱法は、一時的に、いわゆる「ダ
ミ声」を作り、そして、舌を口腔内を操作し、声に
含まれる倍音成分を強調・コントロールする事に
よってメロディーを奏でるという、この地域周辺に
しか見られない特殊な歌唱法である。

 しかし、モンゴル国内では、一部の地域を除き、
ホーミーは、大衆には浸透していない。つまり、一
部の専門的な歌手による、特殊な芸能として存在し
ているのだ。しかし、モンゴルの北西部に存在す
る、ロシア連邦に属するトゥバ共和国では、ホー
ミーに良く似た「ホーメイ」という芸能が、「民
謡」として、大衆にしっかりと根付いている。

 ここでは、オッペイホーメイという、子守唄を取
り上げた。アレンジは、日本のおけるホーメイの先
駆者である「タルバガン」のバージョンによる。


5.賛美詩
 アメリカ合衆国のアリゾナ州には、広大砂漠にナ
バホ族の自治区がある。ナバホ族の儀礼の中に
は、ィエビチェイという春を迎えるにあたって、精
霊なる神に自分たちの罪や穢れを洗い清め、どうか
春が訪れて、春の精霊によって豊かな実りがもたら
されますようにと、願う儀礼がある。

 その中に夜中に歌われる「夜の歌」がある。すべ
ての罪や穢れを洗い清めたのちに、春の精霊「美し
き『気』」を賛美する祈りである。

 春の精霊は、私たちとともに住む。私の前にも後
ろにも横にも私を包むように、いつもいる。そのよ
うに、山の木も花も鳥も動物も、私の飼っている牛
も羊も私たちの家も家畜小屋にもいたるところに、
春の精霊である「美しき『気』」は共にいる、とい
う意味。

 このナバホ語で唱えられる本来の歌は、英訳され
て人々の知るところとなった。それを王函という中
国の人に中国訳をしてもらい、それを趙暁群という
北京歌劇の俳優だった人に朗読してもらい、その抑
揚を声明の旋律によって残そうとした平安時代の日
本の僧侶の作業のごとく、桜井が作曲をした。

 今回のバージョンは、その祈りの中で歌われてい
る自然の声を徳久ウィリアムがノイズで担当する。


6.ボイスパフォーマンス
 絵画が、写実的な技法から、印象派、抽象絵画に
移行した歴史があるように、声楽にもそういう流れ
がある。

 メロディーやリズムといった具体的な技法を取り
払い、より抽象化な音を表現するジャンル、それが
「ボイス・パフォーマンス」と呼ばれるジャンルで
ある。

 今回は、桜井の龍笛を交え、その音色の模倣から
始め、「ノイズ」としかいい様がない音色などを交
えながら、様々な声色を披露する予定である。


7.イザヤ書9章1—5節
紀元前8世紀、ガリラヤ地方はアッシリア帝国の属州
になった。エルサレムから北に遠く離れ、イスラエルの
人々から切り離され奴隷となった「ガリラヤの人々」に
イザヤは「ひとりのみどりごがわたしたちのために生ま
れる」と救い主の到来を預言し人々を力づけた。これを、
テキストどおりの古代ヘブライ語で作曲した。イスラエル
の民族がヘブライ語を話さなくなり、忘れていこうとした
時代に「テアメイ・ハ・ミクラー」という文法上の記号が
文章に記された。これによって、一つの文章の区切り
はどこか、副詞、形容詞はどこにかかるのかを明記した。
その記号に基づいてフレーズを決めていった。この預言は、
後に「キリストの誕生の預言」とキリスト教徒は考える。.

[歌詞]
 闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住
む者の上に、光が輝いた。
 あなたは深い喜びと、大きな楽しみをお与えになり、
人々は御前に喜び祝った。刈り入れの時を祝うように、
戦利品を分け合って楽しむように。
 彼らの負う軛、肩を打つ杖、虐げる者の鞭を、あなたは
ミデイアンの日のように、折ってくださった。
 地を踏み鳴らした兵士の靴、血にまみれた軍服はことご
とく、火に投げ込まれ、焼き尽くされた。
 ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。
ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の
肩にある。その名は、「驚くべき指導者、力ある神、永遠の
父、平和の君」と唱えられる。


8.アメイジング・グレース
 アメリカの黒人音楽のルーツの1つである「黒人
霊歌=ゴスペル」の有名曲。
ここでは、マヘリア・ジャクソンという、アメリカ
黒人の宗教音楽である「ゴスペル」を世間一般に認
知させた功労者のバージョンを取り上げる。
 全身を共鳴させるような、場合によっては、怒鳴
るようにも聴こえるその歌唱法と細かいビブラート
は、現在でもゴスペルの特徴だが、彼女のフレージ
ングが素朴で、当時のアメリカを偲ばせる。


9.唱礼
 これも「胎蔵界曼荼羅供養」で唱えられる
天台声明のひとつ。「道場」という場所に、神々の
名を呼んで降臨を願う。ここでは、胎蔵界の中心に
坐る「大日如来=毘盧遮那仏(びるうしゃなぶつ)」の
名を呼ぶ。


第二部
 この作品の設定は、まだ日本の本州にアイヌの
人々が生活をしていたころ。東北のアイヌの連合国
に対して、大和の「征夷(蝦夷(えみし)の征
伐)」が行われた。

 人々は、「時間をどう費やそう」という常識な人
生を送る。しかし、ある時に、「時間を凝縮しても
やりたいことがある、貫きたいことがある」という
考えに人が襲われた時に、人は、常識からみて「危
険」な生き方を始める。それが、未来の人類にどう
映るか?どう利用されるか?…それが、今、現存す
る勝者の民族の認識へとつながる。

 「歴史」は、「勝者の物語」である。では、敗者
の歴史は?それは「伝説」として、勝者が「文学」
「感動を与えるもの」として存在を許し、共有する
ことによって残されてゆく。残されてゆく音楽の運
命もまた同じ道をたどる。

 その認識の中で、章炳燐に『復仇』という短い論
考に出会った。そこには、「滅ぼされた民族は復讐
してよろしい、したがって動物はヒトに復讐してい
いし、植物は動物に復讐していい……」この論考
が、「伝説を書く」という今回の作業の大きな支え
になった。

 この物語の中で歌われる歌詞
 「われらの力は決して衰えない。神よ、われらの
牛や羊が、どうかすこやかでありますように。
 われらの力は決して衰えない。神よ、われらの暮
らしを、見守ってくださいますように。」

 というトゥバ語の祈りのことばが、トゥバ語、韓
国語、モンゴル語、日本語、沖縄語と主にアルタイ
語族のことばに翻訳されて、物語の中で歌われてゆ
く。

|

« 神秘の声 | Main | 琴や三味線は日本の大衆を代表する楽器じゃない »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 神秘の声 | Main | 琴や三味線は日本の大衆を代表する楽器じゃない »